こんにちは。今日は、エレクトリックミュージックの巨匠rei harakamiさんの楽曲「joy」をコピーしました。
rei harakamiさんは、ミニマル系のエレクトリックミュージックのアーティストです。SC-88proという1996年に発売されたシーケンサーを巧みに操り、独自の世界観を作っています。彼は、2011年に脳出血で40歳の若さでなくなってしまいました。早すぎる死が非常に悔やまれます。
今回は、私も大好きなrei harakamiさんの曲、「joy」を紐解いて、時代においていかれてしまいそうな彼の魂を今の音楽によびもどそうではないか、という壮大な試みです。
楽曲『joy』について
楽曲はこちらになります。2005年に発表のこの曲は、1996年発売のSC-88proの逆再生を駆使して作られた、独特の世界観を持つ曲です。
インタビューで、彼は自身の作曲スタンスを以下のように語っています。
音色から想起させる雰囲気については、僕自身が考えた…というよりも、機材から僕が導き出したモノでしかありません。そこから快楽性を抽出した結果なんだと考えています。機材に関してですが、色んな事が出来る高価な機材からしか良質なモノを作る事が出来ないわけではないし、常に新たなテクノロジーこそが新たな表現を生み出し続けるわけでもありません。
つまり、機材と自分の感性をつなぎ合わせて、そこから「快楽性」を抽出したサウンドを作っているということですね。そして、機材は表現を助ける手段であって、新しいものが必ずしも良い結果を出すわけではないとも言っています。
彼のこのような発言を踏まえて分析していきましょう。
耳コピ動画
今回分析に際して行なった耳コピがこちらになります。
ベースライン・エレピ・メロディがわかるような動画にしてあります。
刻々と変わっていくベースライン
テクノやミニマルミュージックといった、楽曲の中での変化の少ないジャンルは、「気づかないけど徐々に楽曲が変わっていく感覚」があり、そこからいくら聞いても飽きない気持ちの良い楽曲が成り立っています。
テクノの場合は、キックのディレイを増やしたりシンセのフィルターを動かして変化をつけていきます。しかし、この曲の場合はどうでしょうか? エフェクトは楽曲中でほとんど変化していません。
この曲では、同じエレピのリフの上でどんどんとベースラインを変えることで変化をつけています。耳コピ動画をみていただければわかると思いますが、同じエレピのリフの上に、どんどんと違うベースラインが乗っかっていきます。
これができる理由は、エレピにほとんどコード進行の要素がないからです。ずっと同じコードなため、そのコードで使えるスケールの中でフレーズが作りやすいのです。ベースはルートを押さえるのが基本ですが、ずっと同じコードが続く場合はその限りではありません。
さて、ベースの音程的な話をしましたが、ベースにはもう一つの要素があります。リズムです。この曲では、ベースのリズムに3連符を多用しており、8部音符を基本としてつなぎに3連符のフレーズを活用しています。こうすることで、適度な流れの良さを生み出しています。
左右に交互に鳴るディレイ
この曲では、シンバルやメロディーに8部音符のステレオディレイがかけられています。左右交互に鳴るディレイで、曲に独特の恍惚感をもたらしています。
レイハラカミさんのインタビューによると、彼はこのディレイの音場感が好きなのだそうです。「感性から快楽性を抽出する」彼の思想がここにも出ていますね。
こういった長いディレイは、曲とぶつかっても大丈夫な時に効果的なので、変化が少ないこういった曲にはぴったりですね。
今回の耳コピでシンバルに使ったディレイ。ほとんどのディレイのプラグインでステレオディレイは実現できます。
16ビートのシンセパーカッション
この曲には、クラベスのようなシンセのパーカッションが入っています。ドラムは8ビートですが、16ビートのリズムが混ざることで、適度な複雑さが楽曲中に生まれ、味わい深いものになっています。
また、ハイハットも同様で、クラップ(スネア)に対して裏をとるようなリズムになっています。
私見ですが、このような16ビートのリズムが入ると多幸感が出てくると思います。特に単純な曲の中ですと、飽きない心地よさを生み出す大きな要因にもなります。
まとめ
この楽曲の魅力の一つは、「単純さの中に複雑さがある」ところにありそうです。
単純なエレピリフの上でベースがどんどんと変わっていったり、16ビートのパーカッションがさらりとなっていたり。
これもまた、ディレイが交互になるなどの、rei harakamiさんのいう「快楽感」に含まれるのでしょう。
自分の思う「快楽感」を曲の中に入れることができれば、多くの人を楽しませることができる曲ができるのかもしれませんね。
ではでは〜
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