今回は、椎名林檎の長く短い祭りの編曲を分析します。この曲は2015年に発表された曲で、夏の涼しさを感じさせる椎名林檎の代表曲の一つになっています。
今回は、その匠の技を本気で徹底解剖です!
編成
編成は以下のようになっております。普段なら椎名林檎の曲に必ずと言っていいほど登場するエレキギターが今回は登場しません。
- 椎名林檎(Vo)
- 浮雲(Vo)
- エレピ・ピアノ
- トランペットx4
- ベース
- ドラム・クラップ
- コンガ・トライアングル・シェイカー・タンバリン(フィルだけ)
構成
構成はだいたい以下のような感じです。
S間ABSABSS間ピアノソロSS間
- 1 サビ(リズム隊なし)
- 2 間奏 (気だるいフレーズ)
- 3 Aメロ 場違いに〜
- 4 Bメロ 人生なんて〜
- 5 サビ みんなめいめいとりどりの衣装〜
- 6 Aメロ 何かしら〜 (リズム隊なし+気だるいフレーズ)
- 7 Bメロ 永遠なんて〜
- 8 サビ みんなめいめいよりどり全方位〜
- 9 サビ ちょいと女盛りをどうしよう〜 (4つ打ち)
- 10 間奏 (はっきりしたフレーズ)
- 11 間奏 ピアノソロ(テンポ半分に)
- 12 サビ ちょいと大輪のしだれ柳〜(バスドラなしから入る)
- 13 サビ ちょいと女盛りをどうしよう〜 (+1転調)
- 14 アウトロ (4つ打ち、はっきりとしたフレーズ、能動的三分間のフレーズ)
聴きどころ
椎名林檎の声はもちろんですが、全て意図され尽くしたアレンジも注目に値します。サビがなんども登場する中で、どんどんとその形を変えていく様や、サビに向かう下準備の万全さなど、随所に椎名林檎や参加者の方々のこだわりが見られます。
詳しいアレンジ
1 サビ(リズム隊なし)
椎名林檎と浮雲が歌い、バックがエレピだけ。
声がケロケロになっています。本人曰く、夏のサイダーのような雰囲気を出すためにケロケロにしているそうです。
だからといって人間的特徴をなくすようなエディットではありません。もともとのこぶしビブラートの部分は反映されていて、ダイナミクスもある程度維持されています。
イントロは掴みが大事です。
椎名独唱の「天上」がイントロとなっていますが、この部分だけ声質の違う二つの声がミックスされています。低い方は表現も豊かでよりケロケロされており、高い方は安定感のあるなだらかな歌唱となっています。
浮雲の「わするまじ」は、左右から少しずらして鳴らされています。右側の方がちょっと早いのかな。
椎名林檎の歌で「刹那の出会い」の出会いの部分がとてもよいので、その部分だけ右側に広がるように広めのリバーブをかけてあります。
ちなみに最後のフィルインはサンバ的な三連符の揃ったフィルで、その裏でなるギターの弦をこするような音をエディットした、高音のスクラッチのようなフレーズも要注意です。ハイハットとの絡みがかなりよく、気持ち良いです。
2 間奏 (気だるいフレーズ)
トランペット、エレピ、ウッドベース、ドラムです。
見えにくいですが楽譜はこんな感じになります。(耳コピなので正確さは保証できないです。)
上からトランペット1、トランペット2、エレピ、ウッドベース、ドラムの順です。
注目して欲しいのは上二つのトランペットです。気だるい感じを出すために、4度がさねで主に進行し、早いパッセージにおいては三度重ねの使用が見られます。
どうやらですが、完全4度と長3度の連続したしようはこういった効果を引き出すようです。
他にもトランペットが三連符を多用していることにも注目してください。他のパートがキメの部分以外三連符を使っていないこともリズムの安定感につながっているようです。
あと、ベースが偶数小節の後半にピークを持ってきていることも曲のメリハリに聞いています。
ミックスな話になりますが、バスドラに何らかの方法でかなりきつい歪みをかけてジャズな感じを演出しているようです。リバーブかけてそれをアナログのプラグインで潰したんでしょうか?
3 Aメロ 場違いに〜
アウフタクトで派手なフィルもなく静かに椎名林檎の声が入っています。
間奏と同じコードにトランペットに代わって声が入ってきています。
メロディや歌い方から受ける印象ですが、休符も少なくメロディーの音程もなだらかで、のっぺりとしているように感じます。
4 Bメロ 人生なんて〜
先ほどと打って変わってメリハリの効いたメロディーに変わっていてコーラスも入ってきます。
エレピものっぺりした弾き方から跳ねた感じになっています。
ボーカルの分担は、 浮雲→椎名+浮雲 と、掛け合いのような効果になっています。
ベースの弾き方はAメロからほとんど変わってないです。
5 サビ みんなめいめいとりどりの衣装〜
サビ前のキメを挟んで一瞬無音になり、そのあと椎名林檎の「みんな」の声がソロで入り、サビが始まります。
ここでトランペットがはいります。フィルの部分以外レガートなフレーズとなっています。
ドラムは8ビート寄りになっており、その上にエレピが16部でバッキングしています。
6 Aメロ 何かしら〜 (リズム隊なし+気だるいフレーズ)
Aメロに突然戻りますが、ここでドラムが一旦いなくなります。そして、曲の重心がかなり上に移動します。
というのは、エレピが一オクターブ上で白球を弾き、椎名林檎の声に一オクターブ上の声(ディレイがすごい)と5度上のハモりが重なっているため、音符の分布がかなり上になっているためです。
8ビートのリズム感も減り、2の間奏で現れた気だるい感じのトランペットが重なってきます。
リズムを補強し、夏の感じを出すために、16部系のコンガがフレーバーとしてかかっています。
ちなみにこれがこの曲最後のAメロです。2回しか登場しないAメロに変化を持たせるということなのでしょうか。
7 Bメロ 永遠なんて〜
さっきとおなじBメロです。
8 サビ みんなめいめいよりどり全方位〜
さっきとおなじサビです。
9 サビ ちょいと女盛りをどうしよう〜 (4つ打ち)
サビのリズムが完全な8ビートに変わります。ハイハットの裏打ちがダンサブルな感じを醸し出します。それに合わせて、ベースもオクターブ奏法に変わっています。
エレピのパターンも、ラテン系のバッキングからシンプルなものに変わっています。
この辺はリズムの采配なんでしょうね。
トランペットが初めて出現するフレーズに変わります。先ほどの滑らかなフレーズとは打って変わり、はっきりとしたフレーズです。ここでこのフレーズが出るのは、のちの間奏にこのフレーズを弾くフラグにもなっています。
ここはピークの一つですから、夏の感じをより出すために、コンガと、アゴゴのウタタタというリズムも加わっています。
10 間奏 (はっきりしたフレーズ)
サビが終わると、椎名林檎の「ンァア〜」といういい吐息を挟んでトランペットの間奏に入ります。
先ほど九番のサビで出たトランペットのフレーズが主役に踊り出ます。
ドラムも完全なる四つ打ちで、スネアはなくブレイク感が出ています。
シェイカー・コンガと、ベースのラテン系のリズムにより夏の感じを補強しています。どれも4部裏を強調するフレーズになっています。
わからなくなるくらいフェイザー(?)とトレモロで飛ばしたギターのカッティングもかすかに入っています。
11 間奏 ピアノソロ(テンポ半分に)
二番で出たトランペットの気だるいフレーズに、ピアノソロが乗ります。
ドラムのリズムが半分に落ちていて、激しいサビとの対比を強調しています。リズムがゆったりだからかピアノもだいぶリズムを崩して遊んでいるようです。
12 サビ ちょいと大輪のしだれ柳〜(バスドラなしから入る)
かなりリバーブがかかったクラップ、跳ねてるエレピに椎名林檎の声が乗っています。
後半は、バスドラの四部打ちとトライアングルのチキチーが入り、ラスサビへの盛り上げを万全にします。
13 サビ ちょいと女盛りをどうしよう〜 (+1転調)
サビへとは、「ちょいと」からスムーズに入るのかと思いきや、もういちど「ちょいと」で半音上に転調します。
ここは曲中の中で一番盛り上がる場所です。ですから、様々な変化が加えられています。
リズムは8ビートで、エレピがピアノに交代されていて、高い方の音でラテン系のリズムパターンを弾いています。エレピよりもピアノのほうが華やかさがあるからでしょう。
14 アウトロ (4つ打ち、はっきりとしたフレーズ、能動的三分間のフレーズ)
サビ終わりで一拍食って前に出ています。この食いが盛り上げにかなりいい効果を出しているのではないでしょうか・そこでこの曲で一番のピークの音程で椎名林檎と浮雲の声が入ります。
あとは10番の感想のトランペットをループします。
トランペットとピアノが主役になって華やかに曲を締めます。
終わり方はテープエフェクトで、曲全体のテンポを一気に下げてピッチも一気に下げて、この曲の幕を閉じます。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この曲の奥深さに驚かれたのではないでしょうか? 構造的に見ると見えてくるものがありますよね。
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